データ駆動モデルの応用

実験や調査で得られたデータから、入力値と出力値の関係性を見出し、
対象システムにとって有用な情報を抽出する。

生態水理モデリング

水域に生息する動植物の空間分布と物理環境条件(流速や水深等)の関係性から健全な水路の設計・管理を考える。

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 農業用水路やため池、河川などに生息する生物の保全を考える際には、対象とする生物がどのような環境をどの程度必要とするのか(生息環境の質と量)、について定量的に知ることが第一歩になります。例えば、魚の場合、流速や水深、河床材料等の物理環境条件と対象生物の空間分布の関係性に基づいて評価する手法が主流であり、現在でも盛んに研究されています。生態水理学(Ecohydraulics)は、水の流れを科学する水理学と生態学を融合した学問分野であり、工学と生態学の有機的な連携を目指した応用生態工学の体系確立に大きく貢献してきました。近年は、生態水理解析ソフトの開発や統計解析ツールのフリーソフト化が急速に進んでおり、データや知見の集積に伴い、学術的な新展開が期待されています。
※国際的には、生態水理学に関する国際会議が2014年に20年目を迎え、第10回記念大会がノルウェーで開催されました。2018年には、日本で開催されます!

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  当研究室では、水理学や水文学に基づいて物理環境を把握し、物理環境と生物の分布を高精度な生息場モデルで関連付け、その解析結果から、対象生物の保全や生息環境修復、生態系に配慮した水路づくり等に役立つ定量的な情報を提示することを目標とします。簡単に言えば、フィールドで魚や水生昆虫を採集して、データを解析しながら、より良い生息環境とその設計・管理等について考える、ということです。生態系の豊かな農業農村を維持することは、農業生産を支えるとともに、地域にとってもかけがえのない生活環境の維持につながります。

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府中用水での生息環境調査

国内外来種による遺伝子かく乱の高精度モデリング

見えない形で深刻化する国内外来魚の負のインパクトを高精度に予測し、現状把握と対策に活かす。

 「国内外来魚」や「遺伝子かく乱」という言葉を聞いたことがありますか?あまり聞きなれないかもしれませんが、現在、人知れず急速に進みつつある大きな環境問題の一つです。これは、日本在来の魚類によって引き起こされる外来種問題です。ある地域の魚が、国内の別の地域に移殖・導入されることにより、地域固有の進化を遂げてきた生物の遺伝的多様性が急速に失われてしまいます。
※日本における現状は、『向井貴彦・鬼倉徳雄・淀太我・瀬能宏(2013)見えない脅威“国内外来魚”:どう守る地域の生物多様性.東海大学出版会』に紹介されています。

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 本研究は、岐阜大学や九州大学等との共同研究として実施しています。当研究室では、これまでに実績のあるエコインフォマティクスの手法を駆使することにより、遺伝子かく乱の高精度予測と、重要魚種や環境要因の特定を担当します。解析がしたい人も、フィールドに出てサンプリングしたい人も大歓迎です。

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モツゴは、よく見かける国産淡水魚ですが、国内外で注視されています。

水圏インフォマティクス

対象水域内の流量や水質等の時系列解析や水文・水理条件と水質の関係性解析に機械学習を含む計算知能の先進的手法を適用し、高精度にモデリングする。

 水文インフォマティクス(Hydroinformatics)は、洪水解析や降雨流出解析のために発展してきましたが、機械学習等の先進的な手法をいち早く取り入れてきた分野でもあります。近年では、水質も含めた水文・水環境に関する時系列データの解析にも広く利用されています。本手法は、プロセスベースモデルでは表現できなかった現象の再現が高精度にできることが多いため、状況によっては非常に有用です。今後は、水環境観測システムの発展により、ビッグデータ化が進むことが予想されますので、このような解析手法が発展することで、水圏の各種情報の短期予測や変動パターンの解析が可能になります。当研究室では、水文水質を含む様々な水圏情報を対象に、機械学習を中心とした解析手法を用いた応用的研究を実施します。

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農産物の生産・流通環境のモデリング

生産環境データと農産物収量、青果物の物理特性と品質等の関係性について解析し、生産流通に影響を及ぼす諸要因を特定する。

 農業生産性の向上は、経済発展と人口増加に伴う消費量増大への対応策の第一歩です。また、近年では、農産物流通のグローバル化が加速しており、高品質で安全な農産物の安定供給システムの確立が喫緊の課題となっています。そのため、例えば、ASEAN諸国における良好な農業生産システムの高度化は、我が国や欧米等への高付加価値農産物の安定供給を可能とし、ASEAN地域の更なる経済発展の一助になると考えられます。
 一般に、日本国民の食の安全に対する意識は非常に高く、輸出入に関する基準も高いのですが、東南アジア等では、高収量を重視する傾向があるため、過度な農薬の利用や粗放的な水管理などが行われることがあり、圃場管理が不適切なケースが見られます。途上国に限った話ではありませんが、高度な生産流通管理により高収益を得ている農家が存在する反面、その先進的管理や技術の普及が進みにくいのが現状です。
 以上の背景から、当研究室では、作物学や灌漑工学、ポストハーベスト工学等の研究者との国際共同研究に基づいて、イネやマンゴー等の農産物の生産・流通における諸過程の解明に向けたインフォマティクス研究を展開します。その際、データ駆動モデルを駆使した知識獲得により、生産流通管理の高度化に資する有用情報の抽出を目指します。

Mango orchard in Thailand  タイのマンゴー農園
タイのマンゴー農園

Mango fruit after harvest  収穫後のマンゴー果実
収穫後のマンゴー果実